初任給30万円以上が急増、企業の約2割に
―― 住宅手当の新設・増額で「実質的な処遇改善」を図る動きも

日本経済新聞社がまとめた2026年度の採用計画調査によると、大卒初任給を「30万円以上」に設定する企業が、回答企業の約2割に達することが明らかになりました。激化する人材獲得競争に加え、物価高騰への対応が企業に強い決断を迫っています。

1. 2026年度 採用市場の現状と「30万円」の大台

2026年度の大卒初任給の平均額は25万7,220円となり、前年度比で4.5%上昇しました。中でも注目すべきは、初任給30万円以上の企業の急増です。

 • 初任給ランキングの変遷: 一部のIT・コンサルティング業界だけでなく、建設、銀行、保険といった伝統的な業種でも
  大幅な引き上げが相次いでいます。

 • 学生の意識変化: マイナビの調査によれば、学生の約半数が28万円以上の初任給を希望しており、企業側が
    これに応える形で「30万円」がひとつの採用基準になりつつあります。


2. 「基本給」以外での処遇改善 ―― 住宅手当の重要性

今回の調査で特に目立ったのが、福利厚生による「実質的な手取り額」の底上げです。

 • 住宅手当の拡充: 回答企業の約2割(約70社)が住宅手当を増額、または新設しています。
  支給される場合の平均額は約3.9万円に達しており、若手社員の生活基盤を直接支える狙いがあります。

 • 企業のメリット: 基本給の引き上げは残業代や退職金のベースを押し上げますが、住宅手当であれば
  「物価高への柔軟な対応」として導入しやすく、学生に対しても「可処分所得の多さ」をアピールできる利点があります。


3. 中小企業が検討すべき「次の一手」

大手企業の大幅な引き上げに対し、中小企業が単に金額だけで対抗するのは容易ではありません。実務担当者としては、以下の視点での検討が推奨されます。

 1.「可処分所得」で語る採用ブランディング: 住宅手当や奨学金返済支援制度、あるいは昼食補助など、
  実質的な生活費負担を減らす制度をパッケージで提示し、手取り額の魅力を伝えます。

 2.地域に応じた柔軟な設定: 全国一律ではなく、勤務地(都市部か地方か)に応じた手当設定により、
  生活コストに見合った処遇を維持します。

 3.「固定残業代」の透明化: 学生は「基本給」の内訳を非常に厳しく見ています。
  固定残業代を除いた純粋な基本給の底上げが、信頼獲得の第一歩となります。


4. 【実務担当者の悩み】既存社員とのバランス調整

初任給を大幅に引き上げた場合、入社2〜3年目の若手社員や、中堅社員との賃金逆転(あるいは僅かな差)が発生し、組織内に不満が生じるリスクがあります。

 • 全体的な賃金テーブルの改定: 初任給アップをきっかけに、全社的なベースアップ(ベア)や、評価制度と連動した
   賃金カーブの再設計が不可欠です。

初任給の設定は、単なる「入り口」の問題ではなく、企業の賃金体系全体のあり方を問うものです。安易な引き上げは数年後の労務コスト増を招くため、シミュレーションが必要です。

住宅手当の新設や、賃金規定の改定、それらに伴う助成金の活用については、ぜひお気軽にご相談ください。

本記事の内容は2026年4月29日時点の日本経済新聞等の報道に基づいています。 

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